この記事でわかること
「ストーブを何台置いても、工場が暖まらない」
「暖房を入れてから作業できる温度になるまで、午前中いっぱいかかる」
「天井のあたりは暖かいのに、足元がずっと冷たい」
冬の工場や倉庫で、こうした悩みを抱えていないでしょうか。
結論を先にお伝えします。冬の工場が寒い大きな原因の一つは、暖めた熱が屋根や壁から逃げていることです。暖房を増やす前に熱の逃げ道を見直すと、同じ暖房でも工場が暖まりやすくなる場合があります。
本記事では、秋田県の工場で2019年の冬に測った、同じ敷地にある2つの棟の室温データをご紹介します。屋根と内壁に遮熱材「リフレクティックス」を施工した棟と、断熱材の棟です。外の最高気温が3日続けて0℃を下回った日、2つの棟の室温は次のとおりでした。
- 暖房をしていた夕方(2019年2月9日 17時):リフレクティックスの棟は20.4℃、断熱材の棟は13.0℃
- 暖房をしなかった休業日(2月10日):リフレクティックスの棟は9.7〜11.0℃、断熱材の棟は4.2〜7.4℃
※2つの棟は、屋根の構造(ダブル折板/シングル折板)や面積、ストーブの台数も違う別々の棟です。条件は後ほど詳しく説明します。
なぜ差がついたと考えられるのか。その仕組みと、データの読み方、自社の工場で確かめるべきことを順に解説します。
【セルフチェック】あなたの工場の寒さ、原因は暖房ですか?
次の項目に当てはまるものはありませんか。
□ 朝の始業時、工場の中が10℃を下回る日がある
□ ストーブのそばは暖かいが、少し離れると寒い
□ 天井のあたりは暖かいのに、足元が冷える
□ 暖房を入れてから作業できる温度になるまで、何時間もかかる
□ 屋根は金属の折板やスレートで、裏側には何も施工していない
□ 夏は夏で、屋根からの熱で工場が暑い
2つ以上当てはまる場合: 暖房の能力だけでなく、暖めた熱が建物から逃げている可能性があります。暖房機器を増やす前に、熱の逃げ道を確かめることをおすすめします。
1. 暖房を入れても工場が暖まらない理由
建物全体で見ると、熱の移動の75%は「輻射」
熱の伝わり方には、次の3つがあります。
| 熱の伝わり方 | 身近な例 | 建物全体での割合 |
|---|---|---|
| 伝導 | 冷たい床に触れると、足から熱を奪われる | 5% |
| 対流 | 暖まった空気が天井へ上がり、冷たい空気が足元にたまる | 20% |
| 輻射(ふくしゃ) | ストーブに当たると、風がなくても顔が熱くなる | 75% |
※割合はペンシルバニア州立大学の報告(株式会社佐武の資料)によるもの。屋根から下向きに伝わる熱に限ると、93%が輻射です。
輻射とは、温かい物から冷たい物へ、目に見えない熱線(赤外線)として熱が飛んでいく伝わり方です。建物全体(壁や床も含む)で見ると、熱の移動の75%がこの輻射によるものです。
暖房の熱は、冷えた屋根や壁に向かって逃げていく

ストーブの熱は、暖まった空気(対流)だけでなく、熱線(輻射)としても周りに広がります。その熱線は、作業者だけでなく、屋根や壁にも届きます。
冬の屋根や壁は、外気に冷やされて冷え切っています。一般的な建材の表面は、届いた熱線の多くを吸収するため(▶遮熱材と断熱材の決定的な違い)、暖房の熱が屋根や壁に吸い取られ、外へ逃げやすくなります。
これが「ストーブを増やしても暖まりにくい」理由の一つです。さらに、暖まった空気は天井近くにたまり、足元には冷たい空気が残ります。冷え切った屋根や壁に囲まれていると、体の熱も輻射で奪われるため、温度計の数字以上に寒く感じます。
断熱材と遮熱材は、受け持つ熱が違う
断熱材は、熱が伝わる速さを遅くする材料です。熱線を跳ね返すことを目的とした材料ではありません(表面にアルミ箔などの反射面を持つ製品もあります)。
遮熱材リフレクティックスは、純度99.99%のアルミ箔で、届いた熱線の99%を跳ね返します。 屋根や壁の内側に施工すると、暖房から飛んできた熱線を室内側へ戻し、熱が建物の外へ逃げにくくなります。夏は屋根から入る熱を跳ね返し、冬は室内の熱を逃がしにくくする。同じ材料が、季節によって逆向きの熱を受け持ちます。
(熱の伝わり方は ▶なぜ暖房でも寒いの?「熱の3原則」から紐解く、逃げる熱の防ぎ方 でも詳しく解説しています。)
2. 実測:寒冷地・秋田の工場で、2つの棟を比べた
ここからは、実際の工場のデータです。
秋田県で施工させていただいた工場には、同じ敷地に2つの工場棟があります。2019年の測定当時、新しく建てた第2工場は屋根と内壁にリフレクティックスを施工し、以前からある第1工場は断熱材の仕様でした。


2つの棟の条件は次のとおりです。
| 第2工場(リフレクティックスの棟) | 第1工場(断熱材の棟) | |
|---|---|---|
| 面積 | 695㎡ | 1,012㎡ |
| 屋根 | ダブル折板。屋根にリフレクティックス | シングル折板(防露材あり) |
| 壁 | 内壁にリフレクティックス | 断熱パネル |
| 暖房 | 石油ストーブ 3台 | 石油ストーブ 5台 |
| 開口 | 出荷作業のため、高速シャッターを1時間に3〜4回開け閉め | 一日中ほぼ閉め切り |
| 測定 | 2019年2月、毎日7回(5時・8時半・10時・12時・15時・17時・23時) | 同じ |
条件は、どちらか一方に有利なものばかりではありません。リフレクティックスの棟は、屋根がダブル折板で、面積も小さい。一方で、シャッターの開け閉めが多く、面積あたりのストーブの数は断熱材の棟とほぼ同じ(1,000㎡あたり4.3台と4.9台)です。
寒波の3日間:暖房は石油ストーブのみで20℃と13℃
2019年2月8日からの3日間、秋田では最高気温が0℃を下回る「真冬日」が続きました(気象庁 秋田の観測)。

| 日時 | 外気温(気象庁 秋田) | リフレクティックスの棟 | 断熱材の棟 |
|---|---|---|---|
| 2月8日(金)17時 | 最高−1.5℃/最低−5.9℃ | 19.5℃ | 12.7℃ |
| 2月9日(土)17時 | 最高−1.4℃/最低−5.3℃ | 20.4℃ | 13.0℃ |
| 2月10日(日)休業・暖房なし(5時〜23時の7回) | 最高−0.3℃/最低−5.5℃ | 9.7〜11.0℃ | 4.2〜7.4℃ |
暖房は石油ストーブのみで、外が氷点下でも、リフレクティックスの棟は夕方に20℃前後まで暖まりました。断熱材の棟は、13℃前後にとどまっています。
休業日の2月10日は、一日中ストーブを使っていません。この日、リフレクティックスの棟は朝から夜まで10℃前後でした。断熱材の棟は、朝8時半に4.2℃まで下がっています。
1か月の平均で見ても、朝から差がついている
寒波の日だけの話ではありません。2019年2月2日〜28日のうち、日曜を除く23日分を時刻ごとに平均したのが次のグラフです。

| 時刻(2019年2月、日曜を除く23日の平均) | リフレクティックスの棟 | 断熱材の棟 |
|---|---|---|
| 5時(直前の稼働日の終業時にストーブを消した状態) | 11.0℃ | 6.3℃ |
| 10時 | 16.8℃ | 10.8℃ |
| 12時 | 19.9℃ | 14.0℃ |
| 10時に15℃以上あった日 | 23日中22日 | 23日中0日 |
2つの棟の差が最も大きかったのは、朝10時(6.0℃差)でした。リフレクティックスの棟は、ほぼ毎日、10時には15℃以上ありました。断熱材の棟は、10時に15℃に届いた日が一日もありません。
データを読むときの注意点
公平にお伝えするため、このデータの条件も書いておきます。
- 天気によって差の大きさが変わりました。 雪の日は、日中の最高室温に5〜10℃の差がありました。一方、2月下旬の晴れた日は0.3〜1.1℃と小さく、晴れた日曜(2月24日)は断熱材の棟のほうが高くなっています。晴れた日は、屋根から入る日射の熱で断熱材の棟も暖まるためと考えられます。この2棟では、雪の日ほど差が大きくなりました
3. この結果から考えられること
秋田の2つの棟のデータから、冬の寒さ対策について次の3つが考えられます。いずれも、屋根の構造などの違いを含んだ結果であることにご注意ください。
① 暖房の熱を、建物の中にとどめやすくなる
面積あたりでほぼ同じ数(やや少ない数)のストーブで、リフレクティックスの棟のほうが暖かくなりました。屋根や壁から熱が逃げにくいと、同じ暖房でも室温が上がりやすいと考えられます。
② 朝のスタート地点が高く、暖まるのが早い
ストーブを消して一晩以上たった朝5時の室温は、平均11.0℃(日曜を除く23日の平均)。そこから暖房を始めるため、10時にはほぼ毎日15℃以上ありました。始業直後の寒さは、作業のしやすさにも安全にも関わります。
③ 暖房を止めた休業日も、断熱材の棟より高い室温を保った
暖房なしの休業日(2月10日)、リフレクティックスの棟は9.7〜11.0℃、断熱材の棟は4.2〜7.4℃でした。長期休業中の室温のデータは、次回で詳しくご紹介します。
確認すべきこと:自社の工場で、まず測ってみてください
寒さの原因が建物にあるかどうかは、温度を測ると見えてきます。次の4つを確かめてみてください。
1. 始業前の室温と外気温
暖房を入れる前の朝の室温を、外気温と一緒に記録します。室温が外気温とあまり変わらないなら、夜の間に熱の多くが逃げていると考えられます。
2. 暖房を入れてから、作業できる温度になるまでの時間
何時に暖房を入れ、何時に何℃になったかを記録します。暖まるまでに時間がかかるほど、熱が逃げている量が多い可能性があります。
3. 天井付近と床付近の温度差
暖かい空気は天井にたまります。天井付近と足元の温度差が大きいほど、作業者のいる高さは寒く、天井から熱が逃げやすい状態です。
4. 屋根・壁の構造
屋根が金属の折板一枚か、スレートか。天井や断熱材があるか。図面や点検口から確認できる範囲で構いません。同じ「寒い工場」でも、構造によって有効な対策は変わります。
今の時期に検討を始めるべき理由
- 暖冬の予想でも、寒波への備えは必要 — 気象庁は2026年9月18日にこの冬の見通し(寒候期予報)を発表しました。日本気象協会は全国的に暖冬傾向としながらも、「一時的な寒波による急な冷え込みに注意が必要」としています。秋田の2棟でも、差が大きく開いたのは雪の日でした
- 冬の寒さは、冬にしか測れない — どの棟の、どの時間帯が、何℃まで下がるのか。これから寒くなる時期に現地診断を受ければ、建物内部の温度をそのまま測れます
- 屋根の対策は、来年の夏にも効く — リフレクティックスは夏の暑さ対策の材料でもあります。屋根の工事は、現地診断、見積り、予算の確保、施工と段階を踏むため、時間がかかります。冬のうちに検討を始めれば、来年の夏の暑さ対策・熱中症対策にも間に合わせやすくなります(▶WBGT義務化で工場が今すぐやるべき熱中症対策)
無料現地診断で、工場の「熱の逃げ道」を確かめてください
株式会社仲井では、無料の現地診断を行っています。
診断内容
✓ 現地確認(建物の構造・屋根材・周辺環境の確認)
✓ 建物内部の温度測定
✓ 遮熱材リフレクティックスのご説明
✓ 見積り
✓ お客様の建物に合った対策案のご提案
「データだけでは判断しにくい」という方には、リフレクティックスを施工した工場の見学(無料)もご案内しています。見学先と日程は、建物の条件をうかがったうえでご提案します(▶体感見学のご案内)。
株式会社仲井について
株式会社仲井は、1933年創業、建築板金90年以上の屋根・外壁の専門会社です。遮熱施工は15年以上、リフレクティックスの施工実績は全国No.1。施工実績は50万㎡以上、110棟以上(※100㎡以下の小規模物件を除く)、全国32都道府県にのぼり、秋田県・青森県・山形県・新潟県など雪の多い地域の建物にも施工しています。施工は遮熱施工管理士が管理します。
第2回: 暖房を止めた夜と、年末年始の長期休業中。工場の室温はどこまで下がるのか。秋田の工場の実測データと、寒さ対策の方法の選び方(暖房・すき間対策・断熱・遮熱の比較)を解説しています。
▶ 工場の寒さ対策、何から始める?|対策の比較と、暖房を止めた朝・長期休業中の室温を実測データで検証
出典
- 外気温:気象庁「過去の気象データ」秋田 2019年2月の日別値
- 熱の伝わり方の割合:ペンシルバニア州立大学の報告(株式会社佐武の資料)
- この冬の見通し:日本気象協会 tenki.jp「2026〜2027年冬は全国的に暖冬予想 ただし急な寒波と大雪に注意」(2026年9月30日)、気象庁「季節予報」(寒候期予報 2026年9月18日発表) https://www.jma.go.jp/bosai/season/



