「エアコンをつけているのに、なぜか暑い」
そんな経験、ありませんか?
室温はそこまで高くないのに、ジワジワと体が熱くなる──。
実はそれ、“輻射熱(ふくしゃねつ)”という、目に見えない熱が原因かもしれません。
この記事では、工場や倉庫がなぜこんなに暑くなるのか、その本質に迫ります。
キーワードは「熱の伝わり方」。これを知れば、なぜエアコンだけでは暑さ対策にならないのかがスッキリ理解できるはずです。
この記事の目次
熱はどうやって伝わる?──知っておきたい「熱移動の3原則」
暑さの原因を根本から考えるには、「熱の移動メカニズム」を理解することが大切です。熱の伝わり方は、以下の3つに分類されます。

【1】伝導(でんどう)
物体内部や、物体同士が触れている部分を通じて伝わる現象です。温度の高い方から低い方へ、じわじわと熱が移動していきます。
(例:アイロンを布に当てると熱くなる)

【2】対流(たいりゅう)
液体や気体が移動することによって熱が運ばれる現象で、温度差によって生じる流れが熱の移動を引き起こします。
(例:暖房を入れると暖かい空気が上昇し、冷たい空気が下がって循環する)
👉 ポイント:熱い空気は上に、冷たい空気は下に流れます。
つまり、いくら屋根が熱くなっても、その熱い空気が自然に下へ降りてくることはありません。この性質が、室内の暑さの原因とも深く関わっています。

【3】輻射(ふくしゃ)
物体が赤外線などの電磁波を放出することによって熱が伝わる現象です。この電磁波が他の物体に当たると、その中の分子が振動し、熱が発生します。
(例:真冬に電気ストーブの前に立つと、空気はそれほど温かくないのに体がポカポカしてくる)
👉 ポイント:電磁波は温度の高いものほど強く放射され、しかも360°全方向に放たれます。
つまり、太陽によって熱せられた屋根の熱は外へ逃げるだけでなく、室内にもどんどん降り注いでいるのです。
室内が暑い本当の理由──建物の“隠れた熱源”とは?
夏の強い日差しを浴びた屋根や外壁の表面温度は、70℃以上にも達します。
こうした屋根や壁が、まるで巨大なヒーターのように室内へ熱を放ち続ける現象を「再放射」と呼びます。とくに工場や倉庫のような建物は、屋根・外壁の面積が広いため、輻射熱の影響を強く受けやすい構造になっています。
ここで改めて思い出してほしいのが、先ほど説明した対流の性質です。
熱い空気は上に行き、自然に下へ降りてくることはありません。つまり、屋根がいくら熱くなっても、その熱は空気の流れで室内に降りてくるわけではないのです。
問題は、屋根や外壁そのものが“熱源”となり、室内に輻射熱を放射していること。この見えない熱は、空気を介さず、人や床、機械などに直接届いて体感温度を大きく引き上げてしまいます。いくらエアコンで空気を冷やしても、「室温は低いのに暑い」と感じるのは、まさにこの輻射熱の影響によるものです。
工場の暑さ対策は「気温」より「輻射熱対策」がカギ
多くの人は「暑い=気温が高い」と考えがちですが、室内が暑いのは、単に気温が高いという理由だけではありません。
「熱がどう伝わっているのか」を正しく理解することが、快適な環境をつくるための第一歩です。その中でも特に注意したいのが輻射熱です。これは空気を介さずに体に直接届くため、最も体感温度に影響を与える熱の伝わり方です。
つまり、これからの工場の暑さ対策では、
✅ 空気を冷やす(エアコン)
✅ 空気を循環させる(送風機)
だけでなく、
✅ 屋根や外壁からの輻射熱をいかに遮るか(遮熱対策)
が、大きなカギとなります。
まとめ──見えない熱「輻射熱」こそが、工場の暑さの本当の原因
- 屋根や外壁は夏場、70℃以上に達し、輻射熱を放射
- 輻射熱は空気を介さず、直接人や物に熱を与える
- 空調だけでは防げない、“隠れた熱”の存在
- 工場の暑さ対策には「輻射熱対策」が不可欠
エアコンをつけても暑い──その理由は、空気の温度だけを見ているからかもしれません。
見えない熱の正体を知り、屋根・壁からの熱の侵入を防ぐことで、本当に効果的な工場の暑さ対策が実現します。
✅ さらに具体的な対策を知りたい方へ
工場や倉庫の輻射熱対策に有効な遮熱シートについては、
別記事「遮熱材「リフレクティックス」のスゴさとは?」で詳しく解説しています。
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