この記事の目次
1.はじめに
夏が近づくと毎年のように耳にするのが、「工場内が暑すぎて作業効率が落ちる」「エアコンを増やしても全然効かない」といった現場の声。
「空調機器はしっかり入れているはずなのに、なぜこんなに暑いのか?」と頭を抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。
今回は、工場が暑くなる“本当の原因”について掘り下げていきます。
2.暑さ対策の現状
現場で行われている暑さ対策の多くは、「空気を冷やすこと」に集中しています。エアコンやスポットクーラーを増設したり、大型の送風機を導入したり…。
もちろん、これらは効果的な対策のひとつです。ですが、それでも「なんか暑い」「汗が止まらない」と感じているなら、それは“エアコンでは防げない熱”が工場内に入り込んでいるサインかもしれません。
3.工場が暑くなる主な原因
工場内が暑くなる背景には、いくつかの要素が複雑に絡み合っていますが、今回は特に影響の大きい3つの要因に絞って紹介していきます。
3-1.不十分な換気
まず考えられるのが、工場内の換気不足。
古い建物や密閉性の高い構造では、空気の流れが悪く、熱や湿気がこもりやすくなります。この状態では、いくら冷房機器で冷やしても熱が逃げないため、室温が上昇し続けてしまいます。
3-2.大空間による冷房効率の悪化
次に、工場ならではの特徴として挙げられるのが、天井が高く、空間が広いという点。このスケールの大きさが冷房の効きを悪くしている原因のひとつです。
空調機器は基本的に空気を冷やしますが、その冷気を空間全体に行き渡らせるのは、なかなか難しい。局所的には涼しくても、少し離れた場所では「まったく効いていない」と感じることもあります。

3-3.屋根や外壁からの輻射熱
そして最後に、最も見落とされがちで、実は非常に大きな影響を与えているのが“輻射熱”です。
輻射熱とは、高温になった物体から放出される電磁波による熱のこと。太陽からの強い熱線によって、屋根や外壁は高温になります。夏場には屋根の表面温度が70〜80℃にもなることがあり、屋根全体がまるで巨大な「熱源」のようになってしまいます。
こうして熱くなった屋根や外壁が、今度はその熱エネルギーを「電磁波」として室内に放出します。これは“再放射”と呼ばれる現象。太陽からの輻射熱で屋根が熱せられ、そこから再び屋根からの輻射熱として室内に熱が入り込んでくるわけです。

厄介なのは、輻射熱は空気を介さず、室内の人や床、機械などに直接伝わってしまうということ。空気を介さない、つまり輻射熱は通常の冷房機器では防げません。冷房で空気を冷やしても、身体には直接熱が届くため、気づかないうちに体感温度がどんどん上がっていくのです。
「空気は冷えているはずなのに、なぜか暑い。汗が止まらない。」と感じる原因がここにあります。
4.効果的な対策のために必要な視点
暑さ対策というと、「どう冷やすか」ばかりに目が向きがちですが、本当に考えるべきなのは「どうやって熱を入れないか」。
ここまで対策しても効果が出ないのは、「輻射熱対策」が後回しにされてきたからかもしれません。
冷房効率を高め、ムダなエネルギーや電気代を抑えるためにも、まず取り組むべきは、建物に侵入する熱そのものを減らすこと。
この視点を持つことが、本当に効果のある暑さ対策へのスタートラインになるのです。
5.おわりに
次回は、輻射熱をシャットアウトする“遮熱対策”について紹介する予定です。工場の暑さ対策を本格的に進めるヒントとして、ぜひご覧ください。